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"コーラス・ボーイの告白"
天使の歌声とくるくるの巻き毛の裏に潜むのは、葉巻をたしなみ、スピード制限もなんのその、いつかサタデー・ナイト・ライブのホストを夢見る意外な一面。
- By Steven Chean


予想通り、ジョシュ・グローバンはとてもきちんとしていて、食事のマナーも心得た青年だ。

僕らは、グローバンが泊まっているラスベガス、Mandalayホテルのハイローラー(相当な大金を賭ける常連ゲスト)用2ベッドルーム・スイートにいる。若干24歳のこの歌手が、満員の観客12000人、大半が女性ファン(しかもその多くが彼の母親でもおかしくない年齢である)という会場でコンサートをした場所だ。 見渡しよく一つにつながったこのスイートの大きな窓は、ネオンで埋め尽くされたこのラスベガスの地平線を、まるで一枚の絵のように縁どっている。ビュッフェでせっせとサンドイッチを作っているグローバン本人はと言えば、そんな背景は気にもとめていないようだ。
 おなかを空かせた普通の子供だな---上に乗せたパンを片手で押さえながら手際よくサンドイッチを半分に切る彼を見ながら、そんなふうに思った。 パンの耳は食べないらしい。そして彼は、どんなことがあっても口に食べ物を入れたまましゃべったりしなかった。

今となっては、この国の大半がジョシュ・グローバンが何者かを知っている。歌手になった「となりの普通の男の子」。それであってマルチプラチナを達成した、大稼ぎのレコーディング・アーティスト。感情に満ちた瞳に、黒みがかったカーリーヘア。どうみてもやっと車が運転できる歳になったぐらいにしか見えない。だからこそ彼のオペラティックなバリトンの豊かな響きは、人々を驚かせるのだ。彼がひとたびその堂々とした歌声をポップバラードに乗せれば、観衆が(少なくとも前述の女性ファンが)もうメロメロに参って崩れていく音が聞こえてきそうだ。もっとも熱狂的なファンたち---『グローバナイツ』と名づけられている---は、復活の儀式を行う伝道師に注がれるような熱烈なまなざしで、町から町へと彼のあとを追う。

17歳で凄腕のプロデューサー、デイヴィッド・フォスター(セリーヌ・ディオンやホイットニー・ヒューストンといった大物歌手による大ヒットバラードソングの生みの親)に発掘されて以来、グローバンのCDやDVDの売り上げ枚数は1000万近い。ほとんどのコンサート開催地でチケットは完売。NYのマディソンスクエアガーデンも完売した会場のうちの一つだ。アカデミー賞授賞式でのパフォーマンス、という誰もが欲しがるチャンスをものにした彼は、これまでもローマ法王の御前からTV番組の『Oprah』まで様々なところで歌を披露してきた。ついこの間終えたばかりなのが、昨年9月にLAのグリークシアターで収録されたコンサートのCD/DVD『Josh Groban Live at the Greek』のプロモーションを兼ねた30都市を廻るツアーだ。

現代において有名人になる前提条件とも思える『過度なメディア露出』も無しに、このスーパースターはどうやってトップリストに名を連ねるまでになったのだろう?
PBSの『Great Performances』を含む、注意深く下準備された番組出演が功を奏し、グローバンは好奇の目にさらされることなくトップに登りつめることができたのだ。

「彼が他と大きく違うのは、背後にものすごい草の根運動をやってのけるマーケティング・マシーン達がいるから。」と、シカゴ サンタイムズのエンターテイメント編集者であるMiriam DiNunzioは言う。「冷静に考えてもみて。彼の曲はラジオで頻繁にかかりはしないし、MTVやVH1の常連でもない。なのに売り上げは1000万枚近く?彼は芸能界の平凡に属さない。そこが彼の違い。今誰もがやっている、「ポップ・ミュージック・スター製造機」には彼は関わらない。そんな必要はないしね。」グローバンはタブロイドの恰好のエサになる類のパーティーを避け、サマーアーツキャンプ以来の旧友や、2年近く交際しているガールフレンドのJanuary Jones(アシュトン・カッチャーの元彼女)と過ごすことを好む。 去年、ビバリーヒルズにある新築のコンドミニアムに引っ越す前までは、LAの高級住宅地ハンコックパークの辺りに家族と住んでいた。とても仲の良い家族の構成は父のジャック(59歳、ヘッドハンティング会社を経営)と母のリンディ(62歳、インテリアデザイナー)、それに弟のクリス(20歳、南カリフォルニア大学映画学科の学生)だ。 初めての一人住まいの装飾は誰が手伝ってくれたの?という質問にグローバンは「母さんが色々やってくれた。僕のスタイルは知り尽くしてるからね。」と言う。

しかしこんな---言わせてもらうと---『落ち着きすぎたイメージ』をよそに、グローバンには、激しい面がないわけではない。 葉巻(他でもない、キューバ産)を賞味することも。メタリックチャコールのポルシェ911カレーラ2003年型を運転し、法律違反は1回に限らず、とも告白する。「これを買った時、自分に言ったよ。『よし。この車の限界を試してやる。』って。ベガスまでドライブして、違反切符を2枚切られた。1枚は行きに、もう1枚は帰りにね。時速100マイル(時速160km)で捕まったんだよね。」そしてこう付け加えた。「僕がレーダー探知機を付ける前の話。」

友人達は、このグローバンにカメラにはまず映らない『軽い一面』があることを認める。「彼の音楽を聴いていると、いつも自然の景色のことを考えてるんだろうとか、雨とか哀しみとか愛のことを歌ってるって思っちゃうかもしれないけどね。」親友の一人で、グローバンとは15歳の時ミシガン州Interlochenでの夏季演劇プログラムで出会ったというニューヨーク生まれの23歳の映画制作者、Ben Epsteinは言う。「でもね、彼はとても面白い奴だよ。彼と一緒にいるとこっちは笑ってばかりだ。」

それからグローバンには、たいてい富と名声についてくるエゴというものが全くもって欠けているらしい。「いつだったか二人で出かけたとき、みんなまだ彼のことを知らなくて、他の町に住んでる僕の友人の一人、ぐらいにしか思ってないことがあったんだけど、」Epsteinは思い返す。「ある女の子がジョシュに『あなたは何をやってるの?』って聞いたんだ。そしたらジョシュは『あー、歌手だよ』『ホント?私はね、女優なの』二人は10分ぐらい話してたんだけど、彼は自分が手がけていることをまくしたてるってことは決してなかった。自分の人生がどれだけうまくいってるかなんて絶対に言わなかったんだ。」

「ジョシュと他の男性のポップミュージックスターの違うところは、ジョシュは本当におばあちゃんに紹介しようと自分の家に連れて行けそうな、『近所の男の子』なんだ。」こう言うのはMinneapolis-St. Paul Star Tribuneの音楽評論家Jon Breamだ。
 「彼は威張らないし、ステージの上でも私生活でも本当に人に好かれる好青年。まず、中年の母親達は娘がジョシュと結婚することを夢見て、女の子達はジョシュをとにかく抱きしめたいと願う。なぜかって?彼はスイートで、守ってあげたいタイプで、ロマンティックで、キュートで、そのくせ類ない声の持ち主だからね。『ポペラ座の怪人(operaとpopera=pop-operaをかけている)』なんだよ。」

だがグローバンは、ワンパターン・シンガーというレッテルを貼られるつもりはない。シャワーを浴びている間はどんな歌を歌うのだろう?イタリアン・ラブソングではないらしい。「ロマンチックな歌のタイプじゃないね・・・」とは、インタビュー後の電話談。私は「そうなの?」と。「意外だね。」

グローバンは一息おいて、「かもね。でもほんと、そういうタイプじゃないんだ。何を歌うって聞かれると出てこない。でも! Eddie Vedder は結構上手いよ。"Even Flow" は(シャワー中なら)エコーが一番いい感じ。」

もっと意外なのは・・・Epsteinがそっくりと太鼓判を押す、サウス・パークのカートマンや、ナポレオン・ダイナマイト、といったおちゃらけキャラクターのものまねだ。ラスベガスのコンサートではそんなおちゃらけたところも披露する。手編みの分厚いマフラーをプレゼントに手にしたファン達に「おお!いいね、これ。」とジョシュ。一息の後、「でもロスじゃぁ残念ながら使えないねぇ・・・。」と意地悪の一発。女性ファンが掲げている「ジョシュ、私たちを熱く空っぽにするのはあなた」というサインを声をあげて読んだかと思うと、即座に消化器をつかみ、ピンをとる素振りをみせ、床に置く。会場は大騒ぎ。そんなところは、お茶目な彼である。

少々時代遅れと言われても仕方がないかもしれない。だがこのまじめなスイートさを拒める者はいないだろう。さらに、グローバンは音楽に対して極めて広い視野を持つ、と音楽評論家 Bream氏はいう。「彼は (ポスト・パンク・バンドの) Franz Ferdinando に精通してるのと同じぐらい、Andrea Bocelli の世界も知り尽くしてるんだ。コンサート中は、完璧なイタリア語でアリアを流暢に歌うパバロティかと思えば、歌と歌の間には、ジャスティン・ティンバーレイク並におどけ、「I love you!」の嵐に何分もどっぷりつかっては、微笑んで「話させてくれるまで 待ってよぉっと・・・」などと言ってみせるのである。

「本当のアメリカン・アイドルは、ジョシュだ。」とBreamは言う。「トップ40はファンテージア(ブリノ)、ルーバン(スタダード)、ケリー(クラークソン)にやらせておけばいい。その3人分のCDとコンサートチケットの売上をすべて合わせても、ジョシュの売上には及びもしないのだから。」

グローバンの野心は音楽を超える。まず、映画にも目をつけているらしい。「どんなビジネスであろうと −−音楽であれテレビであれ−−映画よりパワフルな世界はない。」とグローバン。そういう彼自身も、初めてメジャーになったのはテレビ、アリー・マクビールのあるエピソードに出演してからだ。演技で注目を浴びたい、とも望んでいる。「コメディは大好きなんだ。『サタデー・ナイト・ライブ』のホスト、いつかはやりたい。子供の頃からよだれがでるくらい望んできたこと。」

この先彼の歩む道に何が降りかかってこようと、グローバンは自己流でやってのけるだろう。
「この世界は、自分を失うことがとっても簡単。誰かの用意した形にはまってしまって、多くの人がそうやって成功してきた。」グローバンは続ける。「僕は自分の信じるものに忠実にやってきた。おかげで道は険しかったけれど、それだけ価値は大きかったと思う。」


"僕を常に自分に正直でいさてくれる人たち"
by Josh Groban


両親が常に僕に教え込んでくれたことは、自分に正直でいること、そして直感を信じて進むことに動揺するなってことだった。いつも僕が前向きな姿勢を崩さないようにしてくれた。”High Hopes” (『望みは高く』)って歌があるよね?僕は幼い頃、「できない、できない」って思い込む性格だったんだ。得意なことも結構あったし、身の回りに好きなものもあれば、音楽も大好きだったけど、自分で高い望みを抱いてたとは言えない。目標をもっと高く設定すればよかった、ってことも。それでも両親はいつも僕ができるんだって信じつづけられるよう、見守っていてくれた。

中学校のときはとにかく大変だった。成績もぱっとしなかったし、友達作るのも大変だった・・・大抵の中学生がそうだと思うけど、情けなかったなぁ。人によってそういう状態は色んな方法で対処するよね、自分探しの為に。後になって後悔する行動ばかりするような人間もいる。道をそれずに自分を信じて行くことって確かにチャレンジではあったけど、僕はなんとかやってこれた。

音楽に夢中だったこと、そこに集中できたことは本当にラッキーだったと思う。自分が何をやりたいかしっかりわかってたから、そういう大変な時期にはつきものの不安にうちまかされてしまわないでいられた。助けてくれる家族がいて、故郷の街が与えてくれる色んなことに、無理やりでも文化的にどっぷりつかってたからね。芸術が僕に自信を与えてくれた、といっても過言じゃない。周りの子供たちはそう持ち合わせていないような視野と道が、僕には早い頃からあったね。

今、24になってみて、身の回りの「大人」の世界を改めて見てみると、変わっていないものもある。ここ2,3年はどこでもありのままでいられたから、本当にやりがいがあった。みんなが目に耳にしている僕は、僕そのもの。後から「賭けてみてよかった」と思えるリスクって、自分の心の声を聞いて賭けたリスク。自分の本心を欺いて決心したことって、成功しないと絶対後悔する。今までのところ、僕は後悔することってない。この先何年かは、沢山の選択をしていかないといけないけど、いつも僕は自分に正直でいられる、というのが自分でわかってると、どんな選択であれ、わくわくするよね。


"彼のお気に入り"
ジョシュはジャーニーの曲とステーキ&エッグが好き


ゲータレ−ド:
僕はゲータレ−ドのオレンジ味が好き。ステージにはいつも1本置いてある。ライブの前も2本ぐらいは飲むね。家にも常に買ってあるし。
チーズ:
スカンジナビア系の血かなぁ。チーズはずっと好き。小さな頃からとにかく牛のスマイルマークのミニ・ベビーベル・チーズが好きだったなぁ。自分ではクッキーみたいな形なんで、「クッキーチーズ」って呼んでたんだ。赤いワックスのラッピングを剥がすと、パックマンみたいなの。チーズには狂ってるねぇ。
クルーナーズ(低音のバラード歌手):
お気に入りはトニー・ベネット。偉大なロマンチスト・シンガーの一人。
もう一人はスティーブ・ペリー。ジャーニーの曲でお気に入りは「Faithfully」。ペリー自身がツアーに出ていて、恋人を慕う気持ちを表現した歌で、ほろっとくる。その気持ちは痛いほどわかるからね。
ジョシュに出くわす可能性の高いスポット:
オリジナル・パントリー(LAダウンタウンの 877 South Figueroa Street) 。
「子供の頃よく行ってた。カウンターに座って、ステーキ&エッグを注文するんだ。その後ドライブして。交通がひどいLA市内でも、ドライブは大好きだね。お気に入りのコースは LAからマリブに行く途中のパシフィック・コース・ハイウェイ。
ジャニュアリーとはGladstone's 4 Fish Malibu (17300 Pacific Coast Highway にある、海を見下ろすレストラン)によく行ってランチする。きれいな所だよ。いつか引っ越したいと思うね。


"グローバナイツに会おう!"


Deadheads や Phishファンと同じような熱狂ぶりで彼を街から街へと追いかける。グローバナイツと呼ばれるジョシュのファン達は、様々な方法でジョシュへの忠誠心を表現する。
アイダホ州メリディアンのジニ−・オウエン(43歳)と娘レイチェル(17歳)が、年齢を問わないジョシュのファン層の格好の例だ。殆どが女性というジョシュのファンの中には、HOG(Husband Of Grobanites: 「グローバナイツの夫達」)というグループもあるらしい(ジニー夫婦は去年の結婚記念日をジョシュのウィチタ・コンサートに行って祝った)。夫妻はジョシュのファンサイトで親友を作ったという。「私達が出会うことができたのはジョシュのおかげ!」とも。

ジョシュのレコード・レーベルであるリプライズに管理されているオフィシャル・ファンサイト friendsofjoshgroban.com では、1万2千人のファンが、年間39.95ドルの会費を払って未公開ビデオ等にアクセスできるようになっている。ニュース・レターも企画中とのこと。

もう一方のサイト grobanitesforcharity.org では、2004年からグローバンが始めた児童基金のために、バックステージパスやファンの手作り品(T-シャツやパズル、グローバンの顔が浮き出た石鹸なども)、ジョシュの私物(テニスシューズが480ドルで売れたそうだ)をオークションに出し、2千万円以上を集めた。ニュージャージー州(25コンサートを開催)ブリックのマリリン・スキャンドレット(58歳夜間看護婦)は、15万円でジョシュから電話をもらうチャンスを落札したそうだ。(エバン・フランク)

Translated by Rico1130 & Yasuko

*Since May 2004*
*Yasuko*